ぱろしょ出張所

創作小説投稿サイト「ぱろしょ」の管理人たちが書くゆるいブログ。 一話が数行で終わる超ショートショートを書いてみたり、無とはなんなのか。なんでもいいや、という境地を見出す感じのブログです

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2 宣戦布告



四方を城壁に囲まれた「獅子吼の広場」は、城に仕える兵士達の訓練場として使われている場所だ。兵士達は外敵から国を守るため、この広場で日々鍛錬を続けている。
普段であれば、雄々しく武器を振るう兵士達と彼らに檄を飛ばす兵士長の賑やかな掛け合いが見られるのだが、今日という日は少々趣が異なっていた。
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1 体調不良トリプルコンボ



「夏風邪だ。これは完全に夏風邪だゴホッゴホッ」
ある一室。
ベッドに臥せってウンウンうなる姿がある。
「しかも二日酔いがオエーもう五日も抜けないオエー」
ひどいことになっているらしい。
窓も遮光カーテンも閉め切ったその部屋はお昼でも暗い。空気も籠もっている。
「ああ、そのうえ体が痛がゆい」
おそらく昨日食べた卵かけご飯の卵アレルギーで免疫が低下し、そのうえ少しでもアルコールを抜こうと無理に風呂に入ったのが失敗だった。完全に裏目に出た。
「おのれ卵め…!次に相まみえたときは我が灼熱の炎で焼いてくれるわ」
それは単なる卵焼きだということに気付いていない。
ギリ、と歯を食いしばり卵への憎悪を燃やすそのシルエットは不自然にベッドから盛りあがっていた。
初めてみた人は「布団掛けすぎですよ」と言うだろう。
しかしその実、掛け布団はタオルケット、そして薄いレジャーシートのみ。
つまり、身体が半端なくでかく分厚いのである。
更に頭からは二本の角が生えている。耳もどことなくとんがっている。
布団から足がはみ出ている。いや、これは単にベッドのサイズがあっていないだけだ。
「この場合どういう薬を飲んだらいいんだ」
そう、この夏風邪と卵アレルギーと五日目になる二日酔いのトリプルコンボで完全に弱り切っているこの者こそ、
「魔王様!」
「大声出すな、頭に響くから」
がちゃりといきなりドアを開けて寝室に入ってくる者に対し、ベッドに臥せって微動だにせず軽い文句だけを言うこの者こそが
「魔王様!」
「だから静かにしてくれよオエーゴホッ。何があったんだ」
魔王。
全ての魔物の上に君臨する、最強の存在。
病気には負けているが、最強の存在。
「今回の戦い、決着したようです」
「そうか…、して」
魔王はそれなりに威厳をもって低い声で聞く。
虎のような頭を三つつけた四本足の怪物は首からかけたエプロンで器用に前足をふきながら答える。
「我が軍の勝利です」
「うむ、まあ麻雀強いからな、あいつは」
「これで魔軍は100ポイントの差をつけました」
「次はなんだったかな、ハウスタイガーよ」
「モノポリーです」
「では差し向ける者を選ばねばならんな。軍団長をホールへ集めろ」
ゆっくりと体を起こし、ベッドから降りる。
「既に集めております。あとは魔王様がいらしてくれればすぐにでも始められます」
「気が利くな」
「というか皆モノポリーに夢中です」
「面白いからな、モノポリーは」
鉄製のドアノブに触れると少し悪寒が走ったが、我慢してドアを開けた。
「今日のディナーはどうされますか」
「胃にやさしいものだ」
「はっ、かしこまりました」
後ろで返事をするハウスタイガーを置いて魔王は寝室から徒歩8分のホールへと向かった。
長い道のりだ、と思った。


ホールでは軍団長達がワイワイやっていた。騒音で頭がズキズキしたのでイラッとして近くにいた数体に魔王サンダーボルトを撃ち込んだ。
静かになったホールの一番奥の中央席へ腰を下ろす。
「さて、皆の者」
全体に緊張感が走る。魔王にはテーブルにのっているモノポリーのボードも緊張しているように見えた。
「先の戦いは我が軍の勝利となった。喜べ」
"オオー"と声をあげるもの、うなずくだけのもの。
間をおいて続ける。
「次はモノポリー対決である。この選出を行いたいと思う。前回のモノポリーではひどい有様であった。だからワシ自らが選任を行いたいと思っている」
軍団長達がざわついた。普段の選任は立候補制やくじ引きなどだからだ。
「しかしだ。今、ワシは体調が悪い。なのでとりあえず少し待って欲しい。それまでモノポリーの腕を磨いておいてくれ。ああ、次の勝負はいつだ?」
"来週の日曜日です"と近くにいた軍団長が答える。
「そうか、まあそれまでには治そう」
ひとしきりホール内の魔物達を見回し、
「皆も、知っているようにワシは666の病気・アレルギーの類をもっている。正直死んだ方がマシなくらい辛い。死にたい」
魔王は突然弱音を吐き出した。
あまりに切実な感じだったのでなんか全体的にしゅん…とした空気になってしまった。
「特に去年のインフルエンザは凄かった。八千年生きてきた中でも一、二を争う高熱を出した」
後方で"確かに…"という声がした。
「だが」
翻って語気を強める。右の拳を突き出し、グッと力を込めて握りしめた。
「だがワシが魔王だから生きていられるのだ。並大抵の魔物ならとうに死んでおるぞ…!肉体的にも精神的にも!」
"オオオオー!"という声があがる。
全員立ち上がった。ワケのわからない高揚だ。凄いのか凄くないのかわからない。
「そして、ワシが生きている限り、守人なぞに勝利は無オエー」
ドサリ。
高揚感に包まれた締めのセリフの最後、吐き気にやられて魔王はバッタリと倒れた。


てんやわんやな状態になり、軍団長達は医療関係の魔物を呼んだりベッドまで交代で運んだりとぐだぐだな内に会議は終了した。
そんな中、朦朧とする意識の中で魔王は、モノポリーのチャンスカードはあまりチャンスじゃないんだよな…、というような事を思っていたのだった。




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んー、納得いかない部分も多々あるが、そのうちこなれてくるかなあ。
セリフ部分と描写部分のこう、流れがなかなか…。

(文・ビビンバ吉田)

0 プロローグ


今から少し昔の頃の話。
地平線が見えるほどには広い平野に広がるいくつかの石造りの街が世界の全てであった頃。
人々は野を耕し牛を飼い、僅かな糧を日々神に感謝しつつ、さらに僅かな糧を得るために日々小競り合いをしたりして暮らしていた。

小競り合いは時に国単位での戦争となり、そのため多くの血が流れることも割とあったが、どこの国でも平民は貧乏で騎士は臆病、国を統括する貴族の頭には花が咲いていたため、大抵の戦争は短期間で自然と沈静化するのが常であった。諸国の国力はうまいこと平衡しており、大きな視点で見れば平和と言えなくもない時代が続いていた。

そんなおおむね平和な世界にただ一つの例外がある。今や人々から忘れ去られた「守人国(もりびとのくに)」と呼ばれるその国は、平原の東端にそびえ立つ山脈の向こう側、わずかに広がる盆地に石造りの小城を構え、洞穴の奥からやってくる「魔物」たちと遙か昔から戦い続けているという。

身を挺して異形の存在に立ち向かうという彼の国の騎士たちを平原の国の人々は英雄視し褒め称えた。しかし実際には守人国を見たものはおらず、まことしやかにささやかれる噂だけが守人国の全てであった。

ある時、王が東の山脈に向かって調査団を何度か派遣したことがあった。根も葉もない噂で形のない国を英雄視する民衆が蔓延していることを快く思わなかったのである。しかし、待てど暮らせど国に戻ってくる者は誰一人とおらず、市中では、やれ魔物にさらわれただの、守人美人とよろしくやってるだのと、皆思い思いの噂話に興じ、守人国が人々の興味の対象から消えることはなかった。



翻って山脈の向こう。盆地に広がる花畑に据えられた卓を、青年と少女が囲んでいる。
年齢不相応な色香を漂わす金髪碧眼の少女は、膝の上に広げた新聞に視線を落としたまま言った。

「『守人の足跡か! 東の平原で謎の痕跡見つかる』だってさ」
「何ソレ」
「向こうの新聞。麓に落ちてたの」

青年は銀縁の眼鏡ごしに大きく目を見開いて、卓上の牌を凝視している。
右……左……、また右……と獲物を狙う昆虫のように眼球が揺れている。
どちらの牌を切るべきか迷っているらしい。

「この足跡とやら、私の身長くらいあるよ。守人にも巨人並みにおっきい人いるのねー」
「だとしたら、城の増改築を考えにゃいかんな」

相変わらずお互い視線を交わさない。
暫時の沈黙の後、青年はこれだ、と左の牌を卓上に押し出した。

「ロン」
「なにっ!」
「はい満貫~。また私の勝ちね」
「マジか。何連敗だと思ってるんだ。これじゃ今日も親父にシめられちまう」
「ふふ、ご愁傷様」

少女は読んでいた新聞を、卓上に突っ伏している青年の上に放り投げると、空席に置いてあったスコアブックを開き、『魔物』欄に丸をつけた。

「勝敗にだいぶ差がついてきたけど大丈夫かしら?」
「うるせー。守人男児を甘くみんなよ魔物風情が。たかが100勝差、すぐに縮めてやらぁ」
「10勝差の時も同じようなこと言ってたみたいだけど。まあ、身の程を知りなさい、守人風情」
「あー腹立つ! 明日こそ絶対勝ってやる。首洗って待ってろ」
「麻雀は今日で終わりでしょ。明日からはモノポリーだっけ?」
「勝ち逃げを許すとは……」
「別に逃げも隠れもしないわ。帰りはするけど」

またね、とあくびをかみ殺しながら少女は紅い翼を広げて彼女たちのねぐらへと帰って行った。
青年も起き上がって少女と反対方向に歩いていく。肩を落とした姿がひどく小さい。

卓上に残されたスコアブックが風にはためいた。


守人対魔物、通算戦績――46609対46709。


(文・やまけん)
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